2月9日、「イーブルなごや」において、「いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター」代表の千葉茂氏をお迎えして、職場のハラスメントを考える学習会を開催しました(女性ユニオン名古屋主催)。6月からパワハラ防止が企業に義務付けられる中での学習会ということもあって、40名近い参加者があり、講演終了後も熱心な議論が交わされました。以下は、その概要です。
AFTERではなくBEFOREの対策が大切
千葉氏は冒頭、「危険だ・安全だ」「違法だ・違法ではない」の議論が起きるという段階は既に「危険」「違法」の状態にあるという認識をもつことが大事であり、私たちに求められるのはコトが起きる前の対策であると強調しました。
パワハラ防止法の危険性
法律におけるパワハラの定義は①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素をすべて満たすものと、普通の労働者の感覚とはかけ離れた狭いものになっています。さらに指針は具体例を挙げていますが、例えば指針が「労働者の就業環境が害される」精神的な攻撃として挙げているのは、「脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言」に限っています。千葉氏は、これは明らかな「暴力」であって、それ以外を「違法性がない」ものにする極めて危険な定義であると指摘します。既に、相談の現場ではこれが適用され、言葉によるいじめを弁護士が「法に触れるものには至っていない」という判断をしているとのことです。それだけでなく、これに乗っかることで、使用者の「ここまでは容認される」の都合のいい線引きがさらに拡大されていくと、千葉氏はこの法律を活用することへの危険性を警告します。
法律に縛られないユニオンの出番!
労働組合の団交・交渉においては、合法・違法だけでなく、労働条件整備(働きやすい職場づくり)としての正義・不正義、正当・不当などの判断が含まれています。千葉氏は、こういう法律の限界を超えるところにこそ、ユニオンの出番があると述べ、以下の取組みが必要であると指摘します。「いじめ・パワハラを生む職場環境の劣化は、労働者が気づかないうちに深化する。そうさせないためには、早期発見・早期対応と『見て見ぬふり』をなくすことが重要である。とくに『見て見ぬふり』は自分の正義感や倫理観を傷つけることから、結果的に職場の閉塞感やストレスを高め、同じ職場で働く仲間同士の信頼感を損ない、職場を悪化させていくことに繋がる。発生した後のハウ・ツーではなく、いじめは構造的におきることを自覚し、発生した問題の背景や可視化していない問題に目を向け、深化に敏感な職場環境を作ることが重要である」。
講演終了後の質疑応答では、「ユニオンでは、厚労省が示した6つの行為類型を使って交渉しているが、それはやめた方がいいのか」という質問に対して、千葉氏は「この類型に収まらない多様なハラスメントがあるため限界がある。むしろ、労働契約法上の安全配慮義務を使う方が包括的であり有効である。ユニオンもこれから労働契約法の使い方を考えるべきではないか」と提案しました。千葉氏の講演を踏まえ、コミュニティユニオン・東海ネットワークとしてもいじめ・パワハラにどう取り組むべきか引き続き考えていくことを合意し学習会を終了しました。
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